PRACTICAL VOCAL ACOUSTICS ・ ピヨ版
Practical Vocal Acoustics(実践的声楽音響学)/ Kenneth Bozeman 著
ピヨ鳥せんせい、第7章は「高い声」専用の章ニャ?ひとことで言うと?
そうピヨ。第6章のしくみをトレブル(高声)に当てはめる章ピヨ。要点はこの4つピヨ:
キモは②と③ピヨ。母音を開いてF1を音程に合わせ続ける(fR1:1fo追従)――これがトレブルの“高音の命綱”なんだピヨ!
低い声(非トレブル)と高い声(トレブル)で、そんなに事情が違うニャ?
けっこう違うピヨ。まず声帯の使い方ピヨ。低い声はほぼメカニズム1(M1=厚い声帯、TA筋)のまま。トレブルは中低音域でM1からメカニズム2(M2=薄く伸びた声帯、靭帯中心)へ移行し、超高音(C6以上)ではメカニズム3=ホイッスル(口笛)レジスターを使うピヨ。
2つめが倍音の数ピヨ。これがけっこう切実ピヨ:
“since treble ranges are about an octave higher than non-treble ranges, treble voices have half as many harmonics within keyboard range available for resonation.” → トレブルの音域は非トレブルより約1オクターブ高いので、鍵盤の範囲で共鳴に使える倍音が半分しかないピヨ。 p.59
倍音が半分!それって…倍音が半額セールでお得ってことニャ!?やったニャ!
ピヨピヨピヨヨヨヨ、逆ピヨ!倍音は声の“材料”だから、半分しかないのは困るピヨ。材料が少ないからこそ、その貴重な倍音を確実にF1に乗せる調律が大事になるピヨ:
“For this reason, tuning the first resonance to available harmonics is much more crucial for treble singers; the higher the pitch, the more relevant the principle.” → だからこそ、使える倍音に第1共鳴を合わせることが、トレブル歌手にははるかに死活的なんだピヨ。音が高いほどこの原則が効いてくるピヨ。 p.59
3つめはフォルマントの数ピヨ。女性の声道は平均で男性より約20%短いから、鍵盤内のフォルマントは3つ程度と少なめピヨ。それでも母音フォルマント(F1・F2)とシンガーズ・フォルマント(F3)の要所は押さえられるピヨ。
そして4つめが一番大事ピヨ。F1がト音記号に接するほど近いから、トレブルは非トレブルよりずっと早く(G4〜G5あたりで)「母音を開いてF1で基本周波数を追う」必要があるピヨ。だからこうなるピヨ:
“Western classical treble singing is therefore done in whoop mode a high percentage of the time.” → ゆえに西洋クラシックのトレブルの歌唱は、かなりの割合でウープモードで行われているピヨ。 p.60
ただし、母音を開いて追従すると、全母音が上の [ɑ] の調律へ寄っていくので、母音の区別が薄れる(中央化・中和)ピヨ。それでも歌詞・子音の文脈と「この母音だ」という明確なイメージがあれば、かなり高い音域でも母音は聞き分けられるピヨ。
トレブルって、どの母音が歌いやすいニャ?
中低音域では、クローズ前舌母音 [i][e] が好まれるピヨ。これらはF1がト音記号の低めにあるので、その音域の基本周波数をうまく響かせられるからピヨ。逆に[ɑ] はF1がト音記号の一番上(ソプラノ)にあるので、M1を手放した中低音域では大きく弱ることがあるピヨ。
その弱点を補う戦略がいくつかあるピヨ:
上手くいってる上部中声って、どんな感じがするニャ?
ソプラノはよく「もっと背が高くて細い」音の感覚、ドームが“目の奥”にあると言うピヨ。広がって横長で「口っぽい」“広がった音”とは逆の感覚ピヨ。半分前寄りで持ち上げた舌の背、ほどよくクローズで収束した母音、楽しげな感情、奥歯の間に縦長の四角があるような軟口蓋の前寄りの持ち上げ――これらで十分に「開いた喉」が得られるピヨ。喉そのものはほとんど意識しないのにね。ここで原典の名言ピヨ:
“Kinesthesia for throat space is notoriously false.” → 喉の空間についての運動感覚(体の感じ)は、悪名高いほど当てにならないピヨ。 p.61
えっ、でも歌うときって「自分の喉の感覚」を信じればいいんじゃないニャ?感覚が一番のセンサーニャ!
そこが落とし穴ピヨ!まさにその「喉の感覚」がしょっちゅう嘘をつくから、原典は「悪名高い」と書いているピヨ。「広く開けている感じ」が実は狭い、なんてことが普通に起きるピヨ。だから感覚だけに頼らず、母音・舌・口の形といった“やること”で間接的に喉を整えるのが賢いピヨ。音が母音のF1に近づくと、音色は自然に温かく丸いF1の色へ最大限に移行するから、トレブル歌手はその移行を「許す」よう励まされることが多いピヨ。
母音を開いてF1で追いかけるのにも、限界があるニャ?
あるピヨ。母音を開いてF1で 1fo を追えるのはだいたい B♭5 あたりまでピヨ。それ以上は喉頭をある程度上げて追い続け、F1がもう上げられなくなると、音響レジスターはホイッスル(口笛=メカニズム3)レジスターへ移行するピヨ。そこではF1とF2を寄せて間で基本周波数を響かせたり、第2共鳴が引き継いだりするピヨ。
ホイッスル!…指笛のことニャ?ピューッて。
指笛じゃないピヨ、ピヨピヨ。ホイッスル・レジスターは、声帯がこわばって完全には閉じない、超高音用の特別な振動モードピヨ(E6以上では上皮の振動も関わる)。この“成層圏”の響きでも、ちゃんと母音らしさは聞こえるピヨ。Ian Howell のスペクトラル・トーンカラー研究によれば、それらは [ɔ ɑ a æ] の明るい変種として(G5〜G6の音色帯で)知覚されることが多いピヨ。
理屈は分かったけど、本物の歌手は本当にそうやってるニャ?
原典はレオンティン・プライスが歌う R.シュトラウス「Beim Schlafengehen(眠りにつくとき)」を実例に挙げているピヨ(付録5・YouTube例1)。クローズ母音を歌うとき、母音を開いて第1共鳴を音程に寄り添わせ続け(fR1:1fo追従)、深く丸い音を保っているのが聞き取れるピヨ。まず "sehnliches" のメリスマ(10:01)での [e] の追従ピヨ:
続いて "Kind"(10:22)の [ɪ] も、能動的に開いて/変容させてウープ音色を保っているピヨ:
もっと劇的な例が "Seele(魂)" の [e](12:08–12:19)ピヨ:
最後(12:39–12:52)、"Flügen" と "schweben" のクローズ母音 [y][e] は大きく開いて、第1共鳴と基本周波数を一致させて追従しているピヨ:
同じ「開く」でも、母音ごとに開き方を変えて、ぜんぶF1を音程に合わせてるってことニャね。プロすごいニャ…。
その通りピヨ!理屈(fR1:1fo追従)が、名歌手の実演でちゃんと起きている――ここまで来れば第7章は完璧ピヨ。この調子でいこうピヨ!
Q1. 「ウープモードで大半を歌う」って、低い声でもそうニャ?
いや、これはトレブル特有ピヨ。トレブルは音域が高くてF1がすぐ近くにあるから、早々に 1fo がF1に届いてウープになるピヨ。非トレブル(バス〜テノール)は、まず第2倍音がF1を越えるターンオーバーが主役で、ウープまで行くのは高音の一部ピヨ(第6章参照)。
Q2. 母音を開くと、何の母音か分からなくならない?
高くなるほど母音は中央へ寄って区別が薄れるピヨ。でも歌詞・子音の文脈と、歌い手自身の「この母音だ」という明確なイメージがあれば、驚くほど高い音域でも母音は聞き分けられるピヨ。形を完全に偽る必要はないんだピヨ。
Q3. 高音で「銀色の軽い浮かんだ声」を出したいときは?
原典の注によると、母音をより閉じめに保って 1fo をF1の上に行かせ(ウープ追従をあえてしない)と、柔らかく銀色の、温かみ控えめな高音の「浮遊(フロート)」が出せるピヨ。ただし大音量でこれをやると金切り声になるので注意ピヨ(Note 1)。