PRACTICAL VOCAL ACOUSTICS ・ ピヨ版
Practical Vocal Acoustics(実践的声楽音響学)/ Kenneth Bozeman 著
ピヨ鳥せんせい、第6章「倍音:共鳴 相互作用」!…なんか一番むずかしそうニャ。要点を先に教えて!
大丈夫ピヨ、ここは第5章の延長線上ピヨ。主役は「倍音」と「第1共鳴(fR1)」の出会い方だけピヨ。要点はこの5つピヨ:
一番のキモは②ピヨ。「閉じる・開く」は喉が勝手にやるんじゃなく、倍音とF1の位置関係で決まる――これが分かれば、この章は制覇したも同然ピヨ!
共鳴をよくするって、結局なにをコントロールしてるニャ?
大事な発想の転換ピヨ。倍音の高さは「歌う音程」で決まってしまう=我々には変えられないピヨ。だから我々が動かせるのは共鳴側=F1とF2の位置だけなんだピヨ:
“Since we have no control over the frequency location of the harmonics … the main factor that we can affect in order to be resonant is the frequency location (tuning) of the first two vocal tract resonances and their resultant radiated formants.” → 倍音の周波数位置は(歌う音程で決まるので)コントロールできないピヨ。だから、響かせるために我々が影響できる主因は、最初の2つの声道共鳴(とその放射フォルマント)の位置=調律なんだピヨ。 p.43
共鳴と倍音の「出会い方」って、何パターンあるニャ?
原典は4つ挙げているピヨ:
このうち、特に大事なのが第1共鳴(fR1)との相互作用ピヨ。F1の帯域に倍音が1本も乗らないと、声は弱く痩せるピヨ。低い声は倍音が密だから調律はあまり要らないけど、高い声ほど倍音がスカスカになるから、調律が重要になるピヨ。
音色が「開く・閉じる」って、よく聞くけど物理的には何が起きてるニャ?
すごくシンプルなルールがあるピヨ。倍音がF1を「上に抜ける」と閉じ、「下に落ちる」と開くピヨ:
“Whenever a source harmonic passes through and above the first resonance, there is an aural effect described as a perceptual closing of the timbre. Whenever a harmonic drops below the first resonance, the timbre can be heard to open to some degree.” → 音源の倍音が第1共鳴を通り抜けて上へ行くと「閉じる」、倍音が第1共鳴の下に落ちると「開く」ように聞こえるピヨ。 p.44
このたった1つのルールから、これから出てくるオープン・クローズ・ターンオーバーが全部導けるピヨ。覚えるのはこれだけでいいピヨ!
まず「オープン音色」って?
2本以上の倍音がF1の下にある状態がオープン音色(voce aperta)ピヨ。明るく・まっすぐ・あけっぴろげで、口からダイレクトに出てくる感じ、低ければブザーっぽい音ピヨ。特に強いのが、第2倍音がF1ピークに乗る fR1:2fo カップリングピヨ:
“When the first resonance is tuned to the second harmonic … an fR1:2fo acoustic coupling occurs, which forms an especially strong form of open timbre, characterized by ringing clarity and power …” → 第1共鳴が第2倍音に合うと fR1:2fo の音響カップリングが起き、鳴りのある明瞭さとパワーを特徴とする、特に強いオープン音色になるピヨ。 p.45
下のFig6.1が、その fR1:2fo(第2倍音がF1の山に乗っている)の様子ピヨ:
強くて明るくてパワーがある…じゃあ全力で叫べば最強の歌手ってことニャ!?よーし、ニャー!!
ピヨピヨピヨヨヨヨ、落ち着くピヨ!その「fR1:2foを上へ上へ追いかける」状態こそヤール(yell)音色ピヨ。ミュージカル・ポップス・民族音楽では大事な戦略だけど、西洋クラシックでは避けるピヨ:
“yell timbre is avoided in Western classical singing. … The ability to yell is apparently an inherited, universal, and strong survival instinct.” → ヤール音色は西洋クラシックでは避けられるピヨ。叫ぶ能力は、受け継がれた・普遍的で・強い生存本能らしいピヨ。 p.45
ヤールは喉頭を上げ(管短縮)・咽頭を狭め・口を広げる=発散型(divergent)の形で作るピヨ。これは嚥下(飲み込み)の筋肉を使って喉を締めるので、シンガーズ・フォルマントもキアロスクーロも使えず、加圧発声に傾くピヨ。だから本能的な叫びを「飼いならす」ことが、男声のパッサッジョ訓練の核心なんだピヨ。
じゃあ反対の「クローズ音色」「ターンオーバー」は?
第2倍音がF1を十分に超えて上に行くと、音色が閉じる=ターンオーバー(turn over)するピヨ。これがクローズ音色(voce chiusa)ピヨ:
“When the second harmonic crosses sufficiently above the first vocal tract resonance, the timbre is heard to close or turn over. This crossing is the primary acoustic registration event of non-treble (bass, baritone, tenor) voices.” → 第2倍音が第1共鳴を十分に超えると、音色は閉じる=ターンオーバーするピヨ。この交差が、非トレブル(バス・バリトン・テノール)声の主要な音響的レジストレーション事象ピヨ。 p.47
クローズ音色は、ドーム状・丸み・まとまり・口蓋より上で響く感じ・「カバーがかかった」感じ、と言われるピヨ。下のFig6.3が、まさに第2倍音がF1を越えた瞬間のスペクトルピヨ:
大事なのは、ターンオーバーが「形を変えて」起きるんじゃないこと。管の形(深み・母音)を保ったまま、音程と倍音だけが動いてF1を越えるんだピヨ。このとき自然に起きる母音の微妙な変化を受動的母音モディフィケーション(passive modification)と呼ぶピヨ。意図的に形を変える「能動的」モディフィケーションとは別物ピヨ。
「ウープ」って…フクロウのモノマネ大会で優勝できそうな名前ニャ。ホーホー🦉
ピヨピヨ、実は当たらずとも遠からずピヨ!原典も「hoot(フクロウの鳴き声)」と並べて呼んでいるピヨ。基本周波数(1fo)=歌っている音そのものがF1に届くと、強いfR1:1fo カップリング=ウープ音色(whoop)になるピヨ:
“When the fundamental frequency: 1fo … reaches the frequency of the first resonance, fR1, there is a strong fR1:1fo coupling. This is called whooping or hooting … characterized by a ‘hootier’ full, round, deep timbre.” → 基本周波数 1fo が第1共鳴 fR1 に達すると、強い fR1:1fo カップリングが起きるピヨ。これがウープ(フーティング)で、「フクロウっぽい」満ちた・丸い・深い音色が特徴ピヨ。 p.47
下のFig6.2が、その fR1:1fo(基本周波数がF1の山に乗る)の様子ピヨ:
ウープはファルセット(CT=輪状甲状筋)優位で、流れ発声に向かい、喉頭咽頭の空間と収束型(convergent)の形を作りやすいピヨ。主にクローズ母音、特に [u] でやるピヨ([u]はF1が低いので 1fo が届きやすい)。トレブル声はやがて全母音のF1より高い音を歌うから、しょっちゅうウープモードで歌っていることになるピヨ。
ヤールとウープ、どっちも本能的って言ってたけど、違いは?
どちらも音響的に強くて、人類が本能的にやる発声ピヨ。スポーツ観戦やお祝いで大声を出すとき、人は「叫ぶ(ヤール)」か「ウープする」かのどちらかピヨ。違いは健康リスクピヨ:
“whooping is the lower pressure, lower risk, vocally healthier of the two options.” → ウープのほうが低い圧力・低いリスクで、声にとって健康的な選択肢ピヨ。 p.49
じゃあ健康にいいウープで応援すればいいニャ!オペラの最後も「ブラボー!」をウープで…ホゥ〜〜!🦉
ピヨピヨピヨヨヨヨ、それ実は原典も同じツッコミを入れているピヨ:
“Cultural acceptability is another matter. ‘Bravo!’ in whoop mode is not likely to catch on.” → 文化的に受け入れられるかは別問題ピヨ。「ブラボー!」をウープモードで叫んでも、流行りそうにないピヨ。 p.49
健康的でも、場にそぐわなければ使えない――でもどちらの戦略も、その「野生での表現力」を活かして、芸術的に巧みに取り入れることはできるピヨ。要は使いどころピヨ!
「声が裏返る音程」って、人によって決まった1つの音があるニャ?
ここがこの章で一番重要な発見ピヨ。ターンの音程は「歌っている母音のF1の位置」で決まる=母音ごとに違うピヨ:
“The pitch of turning from open to close timbre is determined by the location of the first resonance of the vowel being sung … The pitch of turning is slightly less than an octave below the first resonance of the vowel …” → オープンからクローズへ裏返る音程は、歌っている母音の第1共鳴の位置で決まるピヨ。その音程は、母音のF1より「1オクターブ弱だけ下」ピヨ(1foは2foの1オクターブ下だから)。 p.50
そして決定的な一文がこれピヨ。もし裏返りが「喉のレジスター」で起きるなら、全母音で同じ音程で裏返るはず。でも実際は違う――だから喉頭原因説は成り立たないピヨ:
“If turning over were the result of laryngeal registration events rather than first resonance locations, one would expect a voice to turn over at the same pitch for all vowels. It does not. Maintaining that view is no longer a viable pedagogic position.” → もし裏返りが第1共鳴の位置ではなく喉頭のレジスター事象によるなら、声はすべての母音で同じ音程で裏返るはずピヨ。でもそうはならない。その見方を保ち続けるのは、もはや成り立たない教育的立場ピヨ。 p.50
開いた母音([ɑ])はF1が高いから高いところで裏返り、閉じた母音([i][u])はF1が低いから低いところで裏返るピヨ。バス声の母音F1位置とターン音程を地図にしたのが下のFig6.4ピヨ:
ターンオーバー(2foがF1越え)してから、ウープ(1foがF1到達)になるまでの間って、どうなってるニャ?
そこに「パワーの谷」があるんだピヨ。第1倍音と第2倍音は1オクターブ離れているピヨ。ターンの直後は、F1の恩恵を手放した第2倍音は力を失い、第1倍音はまだF1に届くには低すぎる――この1オクターブ弱の隙間で声がやせやすいピヨ。特にトレブル声で起きやすいピヨ。
これに対処する第1共鳴の3つの戦略があるピヨ:
さらにこの移行域では、第2共鳴を高い倍音に合わせて音量を補う「第2共鳴戦略」も重なるピヨ。
テノールの「輝く高音」って、その第2共鳴戦略のこと?
その通りピヨ!第2倍音がF1を越えてパワーを失うとき、第2共鳴を高い倍音に合わせて音量と輝きを補うピヨ。Donald Miller によると、前舌母音(F2が高い)なら第4倍音以上、後舌母音(F2が低い)なら第3〜第2倍音を拾うことが多いピヨ。これが多くの一流テノールの「特に鳴る高音」の正体ピヨ(p.54)。ただし最終的にクラシックの深みを保つには、第2倍音がF1を越えた後、第1倍音(1fo)もそれなりにF1で響かせる必要があるピヨ。
Q1. オープン・クローズ・ウープ、3つの違いを一言で!
F1に「どの倍音が乗るか」で決まるピヨ。オープン=2foがF1以下(fR1:2foが最強)/クローズ=2foがF1を越える(ターンオーバー)/ウープ=1fo自体がF1に乗る(fR1:1fo)ピヨ。下→上の順に「開→閉→さらに深い頭声」へ進むピヨ。
Q2. ヤールとウープは何が違うの?両方「追いかける」やつ?
どの倍音を追うかが逆ピヨ。ヤール=fR1:2fo を管短縮で上へ追う(発散型・喉頭上昇・加圧、クラシックは避ける)、ウープ=fR1:1fo(収束型・低喉頭・流れ発声、トレブルの定番)ピヨ。健康的なのはウープ、でも「ブラボー!」には不向きピヨ。
Q3. なんで「裏返りは喉のせいじゃない」と言い切れるニャ?
母音ごとにターンする音程が違うからピヨ。もし喉頭のレジスター切替が原因なら、どの母音でも同じ音程で裏返るはずピヨ。でも実際は、F1の高い [ɑ] は高く、F1の低い [i][u] は低く裏返る――これは裏返りがF1(共鳴)と倍音の関係で起きている証拠ピヨ(Fig6.4)。
Q4. トレブルと非トレブルで、移行の戦略が逆なのはなぜ?
めざす音色が違うからピヨ。トレブルは豊潤で滑らかな頭声(ウープ)を広い音域で出したいから、F1を下げてウープを早める(戦略①)。非トレブルはファルセット/ウープに行きすぎず力強さを保ちたいから、母音を開いてF1を上げウープを遅らせる(戦略③)ピヨ。同じ物理法則を、目的に合わせて逆向きに使っているんだピヨ。