PRACTICAL VOCAL ACOUSTICS ・ ピヨ版
Practical Vocal Acoustics(実践的声楽音響学)/ Kenneth Bozeman 著
ピヨ鳥せんせい、第8章はついに「実際の練習」の話ニャ?要点を先に!
そうピヨ、ここは実践編ピヨ。舞台はB♭3〜F4の換声区(パッサッジョ)、つまり非トレブルの上部パッサッジョ=トレブルの下部パッサッジョピヨ。要点はこの5つピヨ:
一番大事なのは①と②ピヨ。「叫ばずに、裏返りを許す」――これがこの章のすべてピヨ!
そもそも「パッサッジョ」ってどのへんの音域ニャ?
ト音記号とヘ音記号の間あたり、だいたい B♭3〜F4 ピヨ。ここで喉頭レジスターも音響レジスターも大きく移り変わるピヨ:
“This range area constitutes the upper passaggio of non-treble voices and the lower passaggio of treble voices.” → この音域は、非トレブル声の「上部パッサッジョ」であり、同時にトレブル声の「下部パッサッジョ」でもあるピヨ。 p.65
だから、ここで紹介する戦略は両方の声タイプに通用・応用できるピヨ。そして最大の敵が、上行時の叫ぶ本能ピヨ:
“untrained singers instinctively shorten the vocal tract upon ascending, raising the first formant in order to preserve the … strong fR1:2fo acoustic coupling of the yell, a behavior that appears to be a universal, hardwired survival trait.” → 訓練されていない歌い手は、上行時に本能的に声道を短くしてF1を上げ、ヤールの強い fR1:2fo カップリングを保とうとするピヨ。これは普遍的で、生まれつき配線された生存本能のようピヨ。 p.65
叫ぶと加圧発声・重い喉頭調整・音色とファッハの不安定化を招くピヨ。逆に管長と形を保てば、2foがF1を通り抜けてターンオーバー(closing/covering/turning over)が起き、喉のレジスター調整もラクになるピヨ。
「管長を安定させる」って、具体的にどう確認するニャ?喉をぐいぐい押して固定すればいいニャ?
ピヨピヨ、押し込んで固定はダメピヨ!筋肉で喉頭を低い位置に固定すると、声の自由が損なわれるピヨ。やることは、喉頭を上げて喉を締める「嚥下(飲み込み)の筋肉」を働かせないことピヨ。確認は、喉頭の後ろ側の甲状舌骨間隙(こうじょうぜっこつかんげき)を左右そっと触れてモニターできるピヨ(下のFig8.1):
もう一つの柱が収束型(convergent)の共鳴器ピヨ。これは喉頭の近くは広く、舌の背と口蓋の狭め(または唇)の所で狭い形ピヨ。シンガーズ・フォルマントとキアロスクーロの土台ピヨ。コツは、顎を落とすより先に「内側の高さ」がリードすることピヨ:
“For relatively open vowels it should seem to the singer that inner height ‘leads’ and jaw opening follows, rather than vice versa.” → 比較的開いた母音では、「内側の高さ」が先導し、顎の開きがそれに従うように感じられるべきピヨ(逆ではないピヨ)。 p.67
喉のレジスターも訓練するニャ?
目標②はダイナミックな喉頭レジストレーション=音程に応じて滑らかに変わること、ピヨ。感情の表現がいちばん即時的で繊細なアクセス手段ピヨ。例えば胸声的なオープン母音から、1オクターブ上の頭声的なクローズ母音へ滑らかに移る練習が、喉の筋肉に動的な調整を発見させるピヨ。M1(厚い声帯)からM2(薄い声帯)への切替はある点で起きるけど、上手い歌い手はその音色変化を最小化できるピヨ。
目標③は母音ターンへの慣れピヨ。叫ばずにターンさせるのは本能的じゃないから、「いつ・どこで・どう聞こえるか」を知っておくのが助けになるピヨ。[i] や [u] は伝統的なパッサッジョよりずっと下で閉じるから練習しやすいし、クローズの [o][e] は第1パッサッジョあたりでターンするピヨ。未訓練だとターンを許さずに [o]→[ʌ]、[e]→[ɛ] と開いてしまいがちピヨ。
目標④はターンオーバーできる能力ピヨ。慣れたら、適切な音程でターンを許せるように、操作的でなく自動化されるまで反復するピヨ。最良の共鳴調律を保てていれば、どの母音でも表現的なループ上行・下行で、無理なクレッシェンドなしに、一貫したキアロスクーロでターンして戻れるピヨ。
ターンすると母音が変わるって言ってたけど、変わりすぎたら別の母音になっちゃわないニャ?
そこで目標⑤「適切な母音移行を伴う母音の統合性」ピヨ。ターンに伴う受動的な母音移行は、同じ母音ファミリー=「前後の通りの同じ側」にとどめるべきピヨ:
“The passive vowel migration that accompanies vowel turning should not distort vowels, rather should be in the same natural vowel family, on the same side of the ‘front-back’ street …” → 母音ターンに伴う受動的移行は、母音を歪めず、同じ自然な母音ファミリー、「前‑後」という通りの“同じ側”にとどまるべきピヨ。 p.69
「通りの同じ側」…?母音が道路を横断したら、交通違反でキップ切られるニャ?
ピヨピヨピヨヨヨヨ、キップは切られないけど「母音の歪み」と聞こえるピヨ!イメージはこうピヨ:母音には「後舌の通り」[ɑ ɔ ʊ o] と「前舌の通り」[ɛ e ɪ]があるピヨ。移行は同じ側の隣の(より閉じた)母音へならOK(例:後舌の [ɑ] は [ʊ] 方向、[u] は [ʊ] へ)。でも後舌の [ɑ][ɔ] を“通りを渡って” [ɛ] や混合母音 [œ] へ動かすと、舌の形の間違いによる母音の歪みに聞こえるピヨ。これが「道路を横断」=NGピヨ。
目標⑥はキアロスクーロの維持ピヨ。プロの非トレブル上声は輝き(リング)と同時に深み・豊かさも必要ピヨ。管長・締めない喉・必要な収束度を保つことで、F1・F2を音域ごとに調律しつつも、深み依存のシンガーズ・フォルマントを維持するピヨ。
母音モディフィケーションって、結局「形を変える」の?「変えない」の?どっちニャ?
長年論争されてきた問いピヨ。本書の答えは「2種類ある」ピヨ。受動的移行(passive migration)=形を保ったまま音程が上がって自然に母音が変わる、と、能動的モディフィケーション(active modification)=意図的に形を変える、ピヨ。そして音域で使い分けるのが実践的な答えピヨ:
“below the turn to just above it, maintaining shape should prevail. Between the turn and whoop timbre, in close timbre, either can be used. At fR1:1fo whoop coupling and higher, some form of active shape change (vowel opening) must be used …” → ターンの下〜少し上までは「形を保つ」が優先ピヨ。ターンとウープの間(クローズ音色)はどちらでもよい。fR1:1fo ウープ以上では、能動的な形の変化(母音を開く)が必須ピヨ。 p.71
原則は「F1の下に倍音がいくつあるか」ピヨ。低い音ほどF1の下に倍音がたくさんあるから、2本以上F1の下にある音域では、能動的モディフィケーションは(基本の良い収束姿勢を超えて)要らないピヨ。逆に高い音になるほど、倍音が減ってフォルマント調律が必須になり、必要な変容も大きくなるピヨ。だから同じ [i] でも、テノールのC5では大きく開いた形、C4では話声に近い形――同じ「形」を別の音程で使うと別の母音に聞こえてしまうピヨ。
収束型の形にすると、何が良いことあるニャ?
第4章で予告した非線形の相互作用が効くんだピヨ。声道内で反響した音響エネルギーが声帯に跳ね返って、振動を助けるピヨ。これで閉鎖商(各振動周期で声門が閉じている割合)が増え、高い倍音が強まり、しかも余計な声門の締め付け(息)なしに効率が上がるピヨ。Titze は、クラシック歌手の声道を「逆さメガホン」のような収束形と観察しているピヨ。これが慣性リアクタンス(inertive reactance)を高め、声門効率を改善するピヨ。
つまり収束型の形は、キアロスクーロとシンガーズ・フォルマントを生むだけでなく、「少ない息で大きく鳴る」という得まで連れてくるんだピヨ。昔の名教師たちが直感していたことを、Sundberg・Titze・Miller らが物理で説明したんだピヨ。
ターンオーバー(2fo×F1)以外にも、音色が変わるポイントがあるニャ?
あるピヨ。どの倍音でもF1を横切ると音色効果が出るピヨ(上抜けで閉じ、下落ちで開く)。第3倍音はF1の1オクターブ+5度下で、第4倍音は2オクターブ下で交差するピヨ。これら二次的事象も位置が予測でき、教育に使えるピヨ。例えば開母音 [ɛ][ɔ][ɑ] の第3倍音交差は、第1パッサッジョのすぐ下で「ミニ・ターン」を生むピヨ(「より細く・高く」感じられる)。
面白いのが、低い音程の4foがF1を横切る所や3foがF1を横切る所(5度下)で、本番の fR1:2fo と同じ音響移行を、喉頭レジスターの難しさ抜きでリハーサルできることピヨ。これが訓練の宝になるんだピヨ。
あと、高音域で母音を開くって話だけど…[i] より [ɑ] の方が口を大きく開けるに決まってるニャ![ɑ]=「あー」だもん!
ピヨピヨピヨヨヨヨ、直感に反するけど逆なんだピヨ!上声では、F1の位置の関係で[i] は同じ音程の [ɑ] よりも口を“より大きく”開ける必要があるピヨ:
“Though it is counterintuitive, due to their relative F1 locations, an [i] in the upper voice will need to be more orally open in shape than an [ɑ] at the same pitch in order to match in registrational timbre.” → 直感に反するが、それぞれのF1位置の関係から、上声では [i] は同じ音程の [ɑ] よりも口を大きく開けた形にする必要があるピヨ。レジスター音色を揃えるためピヨ。 p.76
[i] はF1がとても低いから、高音では早々にウープ条件を超えてしまう。だから大きく開いてF1を引き上げないと、痩せて窮屈になるピヨ。キミの「あーの方が開く」常識、また裏返ったピヨ!
ここまでの事象を、一枚にまとめて見たいニャ!
あるピヨ。非トレブル(ここではバリトン)のパッサッジョ周辺の音響事象を楽譜にまとめたのが下のFig8.2ピヨ:
これらの事象は、滑らかな音域移行だけでなく表現の道具にもなるピヨ。下行で母音が「開く」と豊かで感情的に、上行で音色が「深まる・丸まる(カバー)」と温かく・高揚した色になるピヨ。予測位置の近くなら、わずかな母音の開閉で安全にこれらの効果を引き出せるピヨ。高音のスリルは、ターン時に第2共鳴×高い倍音のカップリングの共鳴ブーストを使うと増せるピヨ。
Q1. 結局、下部パッサッジョ訓練で一番やるべきことは?
叫ばずにターンオーバーを「許す」こと、その一点ピヨ。そのために管長を安定(甲状舌骨間隙を保つ)→ 収束型に整える → 母音ごとのターン位置を知る → 自動化するまで反復ピヨ。叫ぶ本能を抑えるのが最大の壁ピヨ。
Q2. ターンがうまく起きないとき、原因は?
F1が第2倍音より上に居座っているからピヨ。原因は「母音を開きすぎた」か「喉頭を上げた」、たいていはその両方ピヨ。逆に言うと、母音ターンが予測位置で起きていれば管長が安定している証拠ピヨ。だから「ターンの位置を観察する」ことが、そのまま管長安定の診断・訓練になるんだピヨ。
Q3. 叫ぶクセが頑固なときの応急処置は?
クセが直るまでの一時策として、音色を深めつつ、少し母音を閉じるとターンを誘発できるピヨ。具体的には、ドイツ語的な閉じた [o] を要求する、隣の閉じた母音へ動かす([o]→[u]、[e]→[ɪ])、舌の背を奥歯に触れさせ続ける・軟口蓋を持ち上げる、などの身体的な方向づけピヨ。あくまで再訓練までの足場ピヨ。