ピヨ鳥とピヨ猫の声楽ゼミ
原論文:Ingo R. Titze “Inertagrams for a Variety of Semi-Occluded Vocal Tracts” (2020)
ピヨ鳥せんせ〜!ボイトレで「ストローでウーッてやると喉にいい」ってよく聞くけど、この論文はそれの話なの?なんで効くのニャ?
そのとおりだピヨ!ストローや細い管で発声する練習を、専門用語でSOVT(準閉鎖声道)って言うピヨ。口を細い管で“半分ふさぐ”練習ピヨ。この論文はTitze先生が、その効きめを実際に声を出さず、コンピュータの計算だけで調べたものピヨ。
The methodology was strictly computational.→ 方法は完全に「計算だけ」だったピヨ。(=人に歌わせて測ったんじゃなく、気道の形をモデル化して計算したピヨ)p.2589 要旨
そして計算の結果を「イナータグラム」という図にして見せるピヨ。この図を読めるようになるのが、きょうのゴールピヨ!
イナータグラム…なんか強そうな名前。必殺技みたいニャ。
ピヨピヨ、気持ちはわかるピヨ😸 でも中身はやさしいから安心してピヨ。順番に、①SOVTの効きめ → ②イナータンスって何 → ③図の読み方、と進むピヨ。いこうピヨ!
そもそもストローで発声すると、体の中で何がいいことが起きてるの?
大きく2つあるピヨ。1つめは気道が受動的に広がること。口を細くふさぐと中の圧が上がって、気道の壁がぐーっと押し広げられるピヨ。喉頭も少し下がって、声帯が構えやすくなるピヨ。
First, they generally expand the airways passively because steady pressures are increased along all airway walls.→ 1つめ。SOVTは、気道の壁ぜんぶに一定の圧がかかるので、気道を受動的に(力を入れずに)広げるピヨ。p.2589
2つめは音の響き方(音響インピーダンス)が変わることピヨ。これが今日の主役で、うまく使うと声帯(音源)を気道が手伝ってくれるようになるピヨ。
「広がる」だけじゃなくて「狭める」話も出てくるって聞いたよ。広げたいの?狭めたいの?どっちニャ?
鋭いピヨ!答えは「まず広げて、そのあと一部だけ狭める」ピヨ。のどの筋肉は狭めるのは得意でも広げるのは苦手だから、SOVTで先に全体を受動的に広げておいて、あとから音響に効く場所だけ選んで狭めると得なんだピヨ。この論文は、その「どこを狭めると得か」を計算で探す話ピヨ。
肝心の「イナータンス」って結局なに?いきなり難しそうな響きニャ。
イナータンスは気道の中の空気の“慣性”(動き出しにくさ)のことピヨ。空気にも重さがあって、圧をかけてもすぐには動かず、流れが圧よりちょっと遅れてついてくるピヨ。この“遅れ”がミソピヨ。
Inertance is important because it helps to quantify the degree to which the airway assists the source in vibration.→ イナータンスが大事なのは、気道がどれだけ音源(声帯)の振動を手伝うかを数値で表せるからピヨ。p.2590
流れが遅れると、空気のパルスが“片側に歪んで”鋭くなるピヨ。すると倍音(高い成分)が増えて声が豊かになり、しかも小さい息(低い圧)で声帯が動き出せるピヨ。つまりイナータンスは“楽に、よく響く”を助ける追い風ピヨ。
空気の重さで得するって、じゃあもっと重い気体、鉛のガスとか吸えば最強ってこと!?
ピヨピヨピヨヨヨヨ、発想がすごいピヨ😹 でも空気のままでいいピヨ。ポイントは気体を変えることじゃなくて、気道の“形”でイナータンスを増やすことピヨ。細い管ほど、長い管ほど、空気は動きにくくなる=イナータンスが増えるピヨ。そこで質問——この「追い風」ってどの高さの音(周波数)でも同じだけ吹くと思うピヨ?
うーん…音の高さで変わりそう。だからこそ「グラフ」にするんだ?
大正解ピヨ!追い風は周波数ごとにバラバラピヨ。だから「横軸=周波数、縦軸=イナータンス」でプロットした図=イナータグラムを作るピヨ。次でその読み方をやるピヨ!
じゃあ実際の図を見せてほしいニャ!どこを見ればいいの?
これが図1ピヨ。左=気道の形(声門下と声門上)、右=そのイナータグラムピヨ。読み方はシンプルで、緑の山が高い周波数=追い風が強くておいしい音、緑がゼロ(谷)に落ちる所=追い風が消える要注意ゾーンピヨ。
横軸の110〜3520って音の高さだよね。谷になってる200〜400あたりって、なんか意味あるの?
いいところに気づいたピヨ。実はその200〜400Hzの谷は、女性の話し声や歌の基本の高さ(fo)がよく来る場所ピヨ。だからそこに芯の音が乗るとちょっと不安定になりうるピヨ。でも次からの工夫で、この谷を埋めていけるピヨ——そこがこの論文の面白いところピヨ!
まずストロー自体をいじるとどうなるの?太いストローと細いストロー、長いのと短いの。
図1は太さを6→4→2mmと細くしたものピヨ。細くすると低音側の第1共鳴が下がるピヨ(220Hz→140Hzへ)。効くのは主に低い周波数で、高い方はあまり変わらないピヨ。
The inertance … is affected mainly in the low-frequency region by the tube diameter.→ ストローの太さが効くのは、主に低い周波数のイナータンスピヨ。p.2591
図2は長さを変えたもので、長くすると同じく低音側が下がるけど、高音側の模様はそのまま残るピヨ。つまり太さと長さは似た働きピヨ。
ストローは低音側だったよね。じゃあ高音側は何をいじれば効くの?
喉の奥、声帯のすぐ上の喉頭上部(エピラリンクス)を狭めると効くピヨ。ここは母音の発音にほとんど影響せずに狭められる、便利な場所ピヨ。図3は面積を0.8→0.5→0.2cm²と狭めたものピヨ。
Unlike the effects of the flow-resistant tube geometry, the epilaryngeal airway geometry affects only the high-frequency region.→ ストローの形とちがって、喉頭上部の形は高い周波数だけに効くピヨ。狭めると高音側のイナータンスが持ち上がって、谷(すきま)も減るピヨ。p.2593
つまりストロー=低音の担当、喉頭上部=高音の担当ピヨ。だから両方うまく使えば、低音から高音まで追い風を通せるピヨ!
ストローの奥って、口の中の形=母音も関係するの?ウーの口とアーの口で違うとか?
関係するピヨ!図4は、チューブの奥を /i/・/u/・/ɑ/ の形にしたものピヨ。口の奥の広い・狭いで、どの周波数が持ち上がるかが変わるピヨ。
どちらも良さがあって、訓練したい声の質で使い分けるものピヨ。臨床で言う「ほっぺをふくらませる(puffy cheek)」も、口の奥を広げて第1・第2倍音を強める工夫の一つピヨ。
ここまでバラバラに効く話だったけど、全部いいとこ取りしたら最強になる?
まさにそれが図5ピヨ!細いストロー(2mm)+狭くて長い喉頭上部+咽頭を広げ+チューブの奥を狭める——この組み合わせが、いちばん広い範囲で追い風をくれるピヨ。
The combination of epilaryngeal airway narrowing and lengthening, a pharyngeal expansion, and an oral narrowing behind the tube produce the best overall results. This configuration supports frequency components of the source over a 300- to 4000-Hz range.→ 喉頭上部を狭めて長くし、咽頭を広げ、チューブの奥の口を狭める——この組み合わせが総合ベストピヨ。300〜4000Hzの広い範囲で音源の成分を支えられるピヨ。p.2589 要旨/p.2594
図5の /i/(上)を見ると、緑が谷なしでなめらかにずーっと続いているのがわかるピヨ。谷はほんの200〜300Hzだけに減ったピヨ!
結局、明日から使える“おみやげ”は何ニャ?ストローの選び方とか。
論文の実用ポイントはこれピヨ:
the length of a tube or straw does not matter if the inner diameter is on the order of 3 mm or less.→ 内径がだいたい3mm以下なら、チューブやストローの長さは問題にならないピヨ。p.2589 結論
なるほど〜!イナータグラムは「どの音が追い風をもらえるか」の地図なんだね。緑の山を探す、谷は工夫で埋める。ちゃんと覚えて帰るニャ!先生ありがとう〜!
その理解でばっちりピヨ!もっと数式や理屈まで踏み込みたくなったら、上の「詳細対話版」や「原文精読版」ものぞいてピヨ。この調子でいこうピヨ、応援してるピヨ!🐤
最後に3問だけたしかめピヨ!自分で答えてから開いてみてピヨ🐤
Q1. 「イナータンス」をひとことで言うと、何のことピヨ?
気道の中の空気の「慣性(動き出しにくさ)」。流れが圧より少し遅れてついてくることで、声が豊かになり小さい息でも響く“追い風”になる(Scene 2)。💡 答えを見る
Q2. ストローの太さ・長さは低音/高音のどっちに効く?喉の“のど仏あたり(喉頭上部)”はどっちピヨ?
ストロー=低音担当、喉頭上部=高音担当。だから両方うまく使うと、低音から高音まで“追い風”が通る(Scene 4・5)。💡 答えを見る
Q3. 内径3mm以下の細いストローを使うとき、長さは気にしたほうがいいピヨ?
気にしなくてOK。内径が3mm以下なら、長さは(理論上)関係ない。細ければ短くても十分効く(Scene 8)。💡 答えを見る
Ingo R. Titze, “Inertagrams for a Variety of Semi-Occluded Vocal Tracts,” Journal of Speech, Language, and Hearing Research, Vol. 63, 2589–2596 (August 2020). National Center for Voice and Speech / University of Utah. https://doi.org/10.1044/2020_JSLHR-20-00060