KEN BOZEMAN ONLINE SEMINAR ・ SESSION 1
声楽音響(PVA)を、ピヨ鳥とピヨ猫のおしゃべりで噛みくだくピヨ。
N8VCJ4$u)ピヨ。
第1回って何の話だったの?いきなり全体像が知りたいニャ。
いい入り方だピヨ!第1回はケン先生をゲストに迎えた回で、テーマは大きく2本柱だピヨ。
そこから「喉を開く(open throat)」の誤解、母音マイグレーション、クリーン信号とダーティ信号、SOVT、咽頭声、加齢とビブラートまで広く話したピヨ。通底するのは「表現が解決策」という一言だピヨ。最後まで一緒にいこうピヨ!
最初の質問は「科学的エビデンスに基づく教育はどの分野で役立つの?」だったよね。科学が出てきたら、昔ながらの教え方は古い・間違いってことになるニャ?
そこをケン先生はハッキリ否定したピヨ。声のどの領域も科学で助けられる、でも同時に「成功してきた歴史的教育学」をとても尊重している、と。上下関係ではなくパートナーだと言ったピヨ。
“I don't conceive of science informed and historic Pedagogy as in a hierarchical relationship. I consider them to be partners.” → 科学に基づく知見と歴史的教育学は、上下関係じゃない。パートナーだと考えているピヨ。 ケン 12:06
そして科学の役割は「確認し・説明する(confirm and explain)」こと。時々、誤解を直すこともあるけど、たいていは昔の良い教えを裏づける、と言ったピヨ。その代表例として挙がったのが「open throat(喉を開く)」だピヨ。次のシーンで見ていこうピヨ!
「喉を開く」って、あくびの「あー」の感じでしょ?あれが一番ガバッと開いてるニャ!
それがまさにワナだピヨ!ケン先生は「open throat の問題は、その感覚が人を誤らせること」だと言ったピヨ。
“The problem with open throat is the sensation of an open throat is misleading.” → 「喉を開く」の問題は、その感覚自体が人を誤らせるところにあるピヨ。 ケン 14:31
あくびの「あー」では、実は舌が喉頭咽頭(laryngopharynx)の奥に押し込まれて、喉はむしろ狭くなっているピヨ。確かめ方が面白いピヨ。ウィンドチル効果だピヨ。あくびの「あー」で空気を素早く動かすと、一番狭いところで冷たさを感じる。冷たいのが喉の奥なら、そこが狭い証拠 — というわけだピヨ。
えっ、じゃあ昔の名教師は何て教えてたの?
「音のしない呼吸をしろ(breathe noiselessly)」だピヨ。ケン先生はそこに自分の助言を足したピヨ。
“the successful historic pedagogues said breathe noiselessly. … I add to that cool in the front, on your tongue and your palate right in the front.” → 成功した昔の先生は「音を立てずに息をしろ」と言った。私はそこに「前で冷たく — 舌と硬口蓋のすぐ前で」を付け足すピヨ。 ケン 16:29
そしてイタリアのベルカントの「open throat」が本当に意味していたのは「音の流れを妨げないこと(an unimpeded flow of sound)」だった、とケン先生は言ったピヨ。運動感覚(kinesthesia)が当てにならない、ってことを覚えておくといいピヨ!
でもさ、息のスピードが速かったら、どうしてもスーッて音が鳴っちゃわない?無音なんてムリだニャ。
その質問、参加者も同じことを聞いたピヨ。ケン先生の答えは「可能(Yes)」。コツは前で冷たさを感じること。もし音が出たら、その音のピッチを下げて「暗く・前を冷たく」していくと、音が消えていくピヨ。ただし大事なのは「前で暗く(dark in the front)」であって、後ろで暗くするのはあくびになっちゃうピヨ。口は大きく開けすぎないことも付け加えていたピヨ。
「前」ってどこ?唇のこと?それとも…おへそ?
ピヨピヨピヨヨヨヨ、おへそで息は吸えないピヨ!具体的には硬口蓋に沿って・舌のブレードと硬口蓋のあいだだピヨ。
“All along the hard palate … on the tongue blade and a hard palate above it. … It's like having a pleasant surprise. But not opening the mouth very wide.” → 硬口蓋に沿って、舌のブレードとその上の硬口蓋のあいだ。嬉しいサプライズを受けた時みたいな感じ。でも口は大きく開けすぎないピヨ。 ケン 30:13
舌は下げずに、上の奥歯に近い高い位置([g]を言うときのよう)に保つのがポイントだピヨ。逆に舌を下げると喉頭咽頭にふくらんで詰まる。だから…
“paradoxically, an /i/ vowel is the most open throated vowel, and an /ɑ/ vowel is one of the most narrow throated vowels. It doesn't feel that way, but that's the truth.” → 逆説的だけど、[i] が一番「喉が開いた」母音で、[ɑ] が一番「喉が狭い」母音のひとつ。そう感じないけど、それが事実ピヨ。 ケン 31:41
感覚と実体のズレ、これがPVAの面白いところだピヨ!
「明るさは前・暗さは後ろ」ってさっきも出てきたけど、これって人間みんなそう感じるものなの?
そうだピヨ。ケン先生は「生まれつき・万国共通の知覚」だと言ったピヨ。
“it's innate and universal, as far as I know, to perceive brightness is forward, and darkness is in back. Unfortunately, that's misleading, because their tuning is practically the opposite.” → 「明るさは前、暗さは後ろ」と感じるのは生まれつきで万国共通。でも残念ながら、声のチューニングではほぼ逆なんだピヨ。 ケン 23:37
整理するとこうだピヨ。
明るい音(高い成分)って、口の形でつくるものじゃないの?口を大きく開けたら変わりそうニャ。
そこをケン先生は「キアロスクーロ・ウィスパー」のデモで証明したピヨ。[i] のささやきのピッチ(=明るい高周波)は「口ではなく咽頭(pharynx)がチューニングしている」と言ったピヨ。証拠はこれだピヨ。口を大きく開けたり閉じたりしても、そのささやきのピッチは変わらない。
“what is literally the second formant … is not being dominated by my mouth shape. Because if I change the mouth shaping, it doesn't change the pitch. … When I open my mouth, I change the 1st formant.” → 文字どおりの第2フォルマントは、口の形に支配されていない。口の形を変えてもピッチが変わらないからね。口を開けると変わるのは第1フォルマントの方ピヨ。 ケン 27:40
つまりF1 は口(開口)、F2 は咽頭。第1フォルマントが暗い側、第2フォルマントが明るい側だピヨ。だから「暗い F1 を前に、明るい F2 を後ろに」感じる、というわけだピヨ!
「宣言的知識」と「手続き的知識」って言葉が出てきたけど、何が違うの?
すごく大事な区別だピヨ。宣言的知識は「物理的な現実・科学で測れること」。でも歌うときに直接使うのはそっちじゃないピヨ。
“We sing by what's called procedural knowledge, which is what it feels like and sounds like to the singer. … You can be a great singer if you have good procedural knowledge, even if you don't know the 1st thing about the declarative knowledge.” → 歌うのは「手続き的知識」=歌い手にとっての感覚と音。手続き的知識が優れていれば、宣言的知識を全然知らなくても素晴らしい歌手になれるピヨ。 ケン 34:00
「前で冷たく」が手続き的知識、「狭いところで空気が冷える」が宣言的知識。それでも教師は両方を知る必要がある、と。ケン先生いわく「教師の頭の中で、その二つが会話しているような感じ」がいいピヨ。
じゃあパヴァロッティが「パッサッジョで chiusa(閉じろ)」って言ってたのは、喉を閉じろってこと?
違うピヨ!それこそ手続き的な言い方だったんだピヨ。
“He wasn't suggesting that they closed their throats. … He was describing an acoustic sensation … it gets concentrated and higher, when you go from open timber up to cuesa timber. … So he was using procedural language.” → 喉を閉じろと言ったんじゃない。開いた音色から閉じた音色(chiusa)に上がると、集まって高く感じる — その音響的な感覚を表していた。つまり手続き的言語ピヨ。 ケン 40:32
そして運動意図(motor intention)はシンプルでなきゃダメ、という話につながるピヨ。「前で冷たく」「暗さを前に」ならOK。でも「輪状甲状筋70%、甲状披裂筋30%」なんて指令は出せない — それは宣言的な話だから混乱するだけ、と言っていたピヨ!
ケン先生の名言が出たって聞いたよ。「言語が問題、表現が解決策」ってどういうこと?
これが今日の核心のひとつだピヨ。会話のレンジの母音をそのまま高音に持っていくのが、不適切なアウトプットターゲットになる、という話の締めくくりだピヨ。
“Language is the problem, or the challenge. Expression is the solution. That's my quote.” → 言語こそが問題(あるいは難所)で、表現が解決策。これが私の名言ピヨ。 ケン 41:42
声という楽器は、言語が生まれるより前から「感情を表現するため」にプログラムされている、というのが理由だピヨ。だから音域いっぱいに「言語」をやろうとしない声 — 子どもの声・動物の声がレッスンで効く。フクロウの遠吠え(howling)は高声部にすごくいい、ウープ音色をまねるから、と言っていたピヨ。高い軽い声区にアクセスしたいときの「I want my mommy 効果」も紹介していたピヨ。赤ちゃんがママに助けを求める声をイメージすると、母音が自然に migrate(受け渡し)するピヨ。
「身体が勝手にいい方へ向かう」みたいな話もあったよね。それって根拠あるの?
ティッツェ(Titze)の論文を引いていたピヨ。「効率への自己組織化」だピヨ。
“Interactive biological systems tend to self organize for efficiency … if they have appropriate output targets and they have sufficient flexibility to explore solutions … And I add the why? Because they feel better.” → 相互作用する生物システムは、適切なアウトプットターゲットと十分な柔軟性があれば、効率に向かって自己組織化する。「なぜ?」の答えは — 気持ちいいから、ピヨ。 ケン 49:49
非効率は不快、十分に非効率なら痛い。だから身体は気持ちいい=効率的な方へ向かうピヨ。そのために必要なのが母音マイグレーションを許すことだピヨ。
母音を変えちゃったら、お客さんは歌詞が分からなくなるニャ?それじゃ困るニャ。
そこも答えていたピヨ。「極端な高音ソプラノでない限り、母音がマイグレーションしてもお客さんに十分通じるディクションは保てる。同じではないけど、音域に沿って受け渡されていくだけ」と言っていたピヨ。キーになるのがターゲット色と補色(compliment)の2つ。ターゲットは「会話のときの母音の色」、補色はそれを補うもう一方の色。会話の音域から離れるほど補色の割合が増え、ターゲットの割合が減るけど、聞き取れるディクションに十分な量はいつも残る、と言っていたピヨ。このあたりは「数ヶ月後に本で学ぶ」と浅野さんも言っていたから、今日は種まきだピヨ!
ディストーションみたいなノイズって、共鳴で作るんじゃないの?
ケン先生は「自分は専門家じゃない」と前置きしつつ、ノイズは共鳴より「振動させている組織」の問題だと整理したピヨ。健康な声帯は対称に振動して…
“The vocal folds are fairly symmetrical structures, and if they're healthy, their vibration can be very symmetrical. Which will tend to produce a so called clean signal, which is essentially harmonic based.” → 声帯はかなり対称な構造で、健康なら振動も対称になる。それがいわゆるクリーン信号 — 基本的に倍音ベースの音を生むピヨ。 ケン 59:07
一方、仮声帯(false vocal folds)や披裂軟骨(arytenoids)など他の組織はカオス的に振動して、非倍音の周波数を持ち込むピヨ。各周期が前の周期と違って見える=ノイズ成分があるということ。持続するノイズが欲しければ「カオス的で非対称・非周期な組織の振動」が要る、とケン先生は説明したピヨ。声帯の結節や病変も非対称振動=ノイズの原因。共鳴フィードバックで一瞬乱れることはあるけど、それは持続しない、と慎重に言っていたピヨ。
声がひっくり返る(ボイスブレイク)のを直すには?予想は「とにかく腹筋ニャ!」
ピヨピヨピヨヨヨヨ、腹筋じゃないピヨ!ケン先生のおすすめはネーザルのSOVTだピヨ。理由が音響的で面白いピヨ。
“When you use some nasalence, it reduces the power of the lowest resonance. It broadens the bandwidth of the lowest resonance, and when you have a broader bandwidth, it's weaker. Which means it's not going to generate acoustic interference.” → 鼻音を少し使うと、一番低い共鳴のパワーが下がる。帯域幅が広がると共鳴は弱くなり、音響的な干渉を起こさなくなるピヨ。 ケン 01:05:46
つまり音響フィードバックが音源を不安定にするのを防げるから、レジスター間をなめらかにつなぐ練習に向いているピヨ。第1フォルマントが強いクリーンな開母音でやるより簡単、とのことだピヨ。しかもSOVTでも「明るさを後ろ、暗さを前」を勧めていたピヨ。鼻に押し込もうとすると圧(pressure)が生まれるからNGだピヨ。
咽頭声(pharyngeal voice)って、要するに鼻声のことでしょ?同じニャ。
そこをケン先生はハッキリ分けたピヨ。感覚は鼻に出るけど、起点は咽頭だ、と。
“why do they call it pharyngeal voice? They didn't call it nasal voice. You will feel sensations in your nose, but it should originate in your pharynx … the very top of the pharynx.” → なぜ「咽頭声」と呼ぶのか。「鼻声」とは呼ばなかった。鼻に感覚はあるけど、起点は咽頭 — 咽頭の一番上なんだピヨ。 ケン 01:09:48
仕組みはこうだピヨ。咽頭声は理想的にはモード2(薄い声帯形状)なのに、すごく良い声門閉鎖を達成するので高周波が出る。感覚はとても細く(slender)、圧はごくわずかで済む、とケン先生は言ったピヨ。
ほかに穏やかな閉鎖の練習ってあるの?
2つ紹介していたピヨ。1つはクリーキーボイス。ドアのきしみ(a door squeaking)みたいな音で、とても柔らかく静か、でも息漏れはない。狙いは「できるだけ穏やかな閉鎖力で完全な声門閉鎖を得ること」だ、とケン先生は言ったピヨ。もう1つはバズ・エクササイズ。上の奥歯(upper back molars)を振動させるイメージで、母音は忘れてバズだけ育てるピヨ。そのバズ自体が [i] の音色だから、[i] と考えなくていい — というのが面白いコツだピヨ。
歳をとると声ってどう変わるの?対策ある?
男性は筋肉量が減って声帯弓状化(bowing)が起きやすいピヨ。対策は気持ちよく表現的な声門閉鎖の練習。とくに面白いのが「hilarity(おかしさ)」だピヨ。ケン先生いわく「ある種の情動は喉の筋肉をとても良い形で安定させる。その一つが hilarity — 何かすごく面白いことを思い浮かべながら出すといい」とのことピヨ。そしてビブラートが遅く・幅広くなる悩みには「ビブラント・シングルネス・オブ・ピッチ」だピヨ。
“if the vibrato rate is quick enough and narrow enough, we can't track pitch vibrato. We hear a steady pitch. … like in the movies … 24 still photos per second … we see a smoothly moving picture.” → ビブラートの速さが十分速く・幅が十分狭ければ、脳は揺れを追えず安定したピッチに聞こえる。映画で1秒24コマがなめらかな動きに見えるのと同じ原理ピヨ。 ケン 01:19:01
速さって、どうやって取り戻すの?
ケン先生は「持続音はアウトプットプランの高速な反復だ」と捉え直し、素早いジェスチャーを使うことを勧めたピヨ。理由は「ジェスチャーを動かす脳の部分と声を動かす部分は隣り合っていて、互いに会話している。そして両方とも『表現』が動かす」から、だピヨ。最後にケン先生はこう締めくくって、家族の集まりへ戻っていったピヨ。
“Expression is the solution. Ultimately, you have to be clever about it.” → 表現が解決策。最終的には、それを賢く使う必要があるピヨ。 ケン 01:23:46
表現すると、発声の直前に声帯が自然と合わさる — というのが今日の通奏低音だったピヨ!
ケン先生が抜けたあと、参加者だけで何を話してたの?
会話ログならではの「論点・未解決・宿題」が出たピヨ。整理するとこうだピヨ。
つまり、第1回は「枠組みの種まき」。第3〜4章で出てくる SFC(シンガーズ・フォルマント・クラスター)やノイズ/濁音の波形は次回以降にじっくり、という見通しだピヨ。よくここまで読めたピヨ、えらいピヨ!
出典・注意